外国語における仙骨
フランス語では、sacreが、「仙骨の」という意味。この言葉は、ラテン語のsacrum /「聖所」という言葉を語源に持ち「神聖な」・「聖なる」という意味でよく使われる言葉。
ドイツ語ではkreuzbein;beinが「骨」、kreuzは「交差点」、「キリストの架けられた十字架」という意味がある。英語ではsacred boneやsacrum、と書く。
神聖視?
なぜ、このように仙骨が神聖視されたのかについて、福岡大学教授宮野成二氏編著の『造語方式による医学英和辞典
(広川書店刊)』に次のような興味深い説が出ている。
「仙骨の原意が、"神聖な骨・sacred bone"である由来については次のような諸説があり、統一した見解を見出すのは困難である。
◆仙骨は死後最後に腐敗する骨であり、復活の日には肉体は仙骨を中心に再構成されるという信仰に基づく。
◆仙骨は脊椎、頭骨など重要な骨を載せ、前方に腸、特に男女の生殖器などを支え保護する、すなわち霊器を守る骨であり、あたかも神に供するが如くである。
◆昭和20年まで薦骨と書かれたのは神に供する、すなわち神に薦(すす)めるの意による。
実際に仙骨がいけにえの儀式に供されたという説もある。
“名は体を表す”と言うが、昔から、仙骨の神秘的で重要な働きはよく知られていたからこそ仙骨の名が残っているのである。
徳川幕府の御殿医として名高い鍼医者も、「究極的には仙骨を治療しなければ病を治療することはできない」 と言ったそうである。 ただ、仙骨は全身のキー・ポイントといっても精妙な器官なので、既成概念を超えた高い理解力がなければ触れてはならない禁断の領域だったと言えよう。
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