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千歳強直翁晩年の力必達集(1)

1983年4月

唐手の詩

恩師新垣翁(アラガキガンタンメイ)より唐手の継承を受け賜ってから60有余年の歳月が流れいつのまにか私も85歳の歳になった。 しかしまだまだ若い者には負けない体力と気力か体のすみずみまで満ちている。
これから先も20年・30年と長生きして、恩師から受け継いだ唐手・千唐流を世界の人々に 伝えていくよう頑張らなければいけないと思っている。

松の根の深さ掘てる思知ゆる 技の深さ学んで知ゆさ
風にうちなびく若竹の如くに 技やむくむくとかるくかわし

この詩は、「松の根の深さは掘ってみてそれがいかに深いものかがわかるように、技の深きも学んでみてはじめてその深遠さがわかる」 ということを詠んでいる。
口先やうわべだけで着飾ってはいけない。足元をしっかりと大地に踏みつけて何事にも「オ−ッ!」と肝っ玉をすえて立ち向って いかなければならないものだ。
千唐流は空手道の基本であり誇りであるということを常に忘れることなく精進してもらいたい。




5月

二十四歩の話

「二十四歩」と書いて「ニーセイシ」と読むこの形は、空手の形の中では過酷な鍛練形として 知られる三戦(サンチン)の前段階において必ず習得しなければならない基本鍛練形の一つである。  
昔は、身に寸鉄を帯びずして、己の身体を鉄石の如く固め、手足を槍や刀の代用のとして使うべく、動物が敵と闘う時のように背を丸くし、 激しい動きと呼吸をいろいろな鍛錬具を利用し実戦的な形の鍛練をした。
その極めつけが三戦「サンヂン」であって、これに歩み寄るため二十四歩を繰り返しそしてくり返し厳しい難儀を積み重ねながら稽古に励んだものである。

思うに.その時の修錬が、医者になった時、空手が医学的にみて健康体の育成にどのような役割を果たすかを考える上で、生きた資料となったことは言うまでもない。
私は、そうした経験からニ十四歩とは、二十四節気を通し終生に至るまでも、たゆまず歩めという示唆から名づけられたものであると 理解している。

(二十四歩と健康)  背筋を伸ばして肩を下げ、足をしっかりと大地に踏ん張って締めあげ、 七分の力の腹式呼吸法で鍛錬する二十四歩は呼吸法が大切である。  
鼻から小さく息を吸い、強く長く、しぼり出すように息を吐くが、この時に下腹{丹田)に圧力を加えることと足の締めを忘れてはならない。 なぜならば、吐きと締める圧力の変化が胸腹の両腔におよび、活発な血液の循環と諸臓器の働きを促し、それが名機能の増進、病気の予防と治病につながり、 身心ともに逞しい生活力を導き出すことかできるからである。  
注意する事は、顔の形相を変えての呼吸の呑吐、肩に力が入った無理なイキミは、脳圧を上げ、その状態を長く続けると心臓へ還るべき静脈血が停滞しうっ血をおこす原因となり、 体に悪影響を及ぼしてしまう。この点は充分留意し稽古をすること。




6月

少年時代の想い出


松村宗棍翁に戦いを挑む
女流唐手家与那嶺つる

私は、琉球王朝と明治政府それぞれの支配階級の同盟ができあがり、新しい沖縄の歴史の局面に入った明治31(1898)年10月、那覇久茂地に生まれた。
 
幼少の頃より、琉球王朝時代の武官(親雲上・ペーチン)であった祖父の寵愛を一身にうけ、よく首里城や唐手名人の家に連れていかれていたようで、 その頃から知らず知らずのうちに、拳法家としての基礎が身に備わっていったのではないかと思っている。

 記憶はさだかではないが、祖父の肩や頭そして手のひらの上にのっては、猿のよう
に跳んだりはねたりして遊び、周囲の人達をびっくりさせたり、 ある時は、国王謁見之間で勢いよく放尿し、祖父を困らせたことがあったと聞いている。

 そうして自由奔放に成長してきたある日のこと、私は祖父の遺言により、当時沖縄で は最高の武人として評せられていた新垣翁の家の門をくぐった。弟子入りである。
この時は未だ7歳にも満たない少年だった。しかしこの時が、 私の人生を決定した日と言えるのである。それからの修業というものは、少年といえ容赦のない厳しい躾、礼儀作法、稽古の連続だった。
けれどもいたずらもよくした。「コラーッ」と来た時にはサーッと姿をくらます。
自慢ではないが逃げ足は迅速且つ機敏、とてもはやかった。  

何年も厳しく激しい修練が続いたが、しなりのよい木の先端に繩をつけ、そこに乗って空中に飛びだし回転しながら海や砂浜に着地する練習や、 サンゴ礁の上を素足で走る練習は恐怖と苦痛の連続だった。しかし、回数を重ねていくうちにどうということはなくなる。 体が地上に浮かんでいるような錯覚におちいるから不思議だね。
苦しい稽古も今振り返ればすばらしい想い出である。
(● 後年、翁先生の祖父は松村宗棍翁であることが判明した) 2へ〈次へ〉
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